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Mariaのはんだ付け

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月17日(水)00時52分12秒 aa039024.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
編集済
  ヒロのライブハウスでのバイトは順調だった。

でもピンチってものは何かしらあるもので。

夕方からリハが始まった。ギターが3人いるバンドが出る。
ところがどうもギターアンプが一台調子が悪い。
何とかリハは終えるが、その調子の悪いアンプはリハ後に
完全電源が入らなくなってしまった。

「予備のアンプはありますよね?」青くなって聴くヒロ。
「今、修理に出して戻ってないんだ。」やはり青くなってマスター。

ヤバイ。本番まであと一時間と少し。

「近所に同業者いないんですか?借りるとか?」ヒロが聞くと、
「最近、つぶれちゃったんだよ。レンタル業者もつぶれた。
遠くならあるんだけど、時間が足りるかな?修理できる楽器屋は
今日休みだし・・・」狼狽するマスター。万事休すか?

最悪ミキサーに直差し・・・なんてなー怒られるなー。
うーん。そこでヒロは思い出した。
「そだ! 灯台下暗し。でもつかまるかな?」

つかまった。Mariaは割と近くにいた。買い物の途中らしいが。

「可及的速やかに私のバイト先に参集せよ。鬼軍曹より」とメールをうつ。

「あいあいさー」とMaria。30分くらいでやってきた。

状況を説明する。

すぐさまアンプをいじり、自分のバッグからドライバー、
テスター、半田ごてを出すMaria。

「それいつも携帯してるんだ?」あきれながらヒロ。

「女子のたしなみだぜ。」とMaria。

すばやくシャーシをあけて、すぐさま「あっ、テスターつかうまでもない。」
簡単な電源コードの断線だった。
「物足りない。もう少し、はんだ付けさせて。」
はんだが溶ける独特なにおい。
「げー苦手だこれ。」とヒロ。
「そうかーいいにおいじゃん。もっとも毒なんだけどね。」
とMaria。
配線が怪しげなところ、はんだ付けが荒いところをMariaはやり直した。
「これで今日はオッケー。でも電解コンデンサーや真空管は、そろそろ限界かも。
すぐに変えたほうが良いよ。」と、シャーシを閉めながらMariaは言った。

音だしチェックのために出演者のギターを借りて、Mariaが弾いてみる。
すんげー良い音。さっきのリハとは雲泥の差。試しにギターの持ち主も
弾いた。Mariaより演奏も音色も若干落ちる。
「弾く人が良いと違うんだね。」赤面しながら、彼はつぶやいた。

そろそろ開店の時間。マスターはMariaにありがとう!ビール奢るよ!
といったが「ドクターペッパーください。もしくはルートビア」
とMariaは答えた。

「ありがと」ヒロも嬉しそうに言った。
「いつか私たちでライブハウスやろうよ。資本と内装のデザインは
ナリ姐で」こっそり囁いた。
 

ヒロの新しいバイト

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月16日(火)22時35分24秒 y227001.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
編集済
  ヒロはジミーに別れる意思を告げる。
唐突な言葉に狼狽するジミー。当然すぐには
受け入れがたい。

感情的にならずにはいられない。きれいにかっこよくは
いかない。何しろ二人とも若い。今まで、こういう経験もなかった。

どれだけ話しても堂々巡りであることが彼にもわかった。
スグにすべて受け入れることはできなかったが…

こうした苦い別れであったが、ケンカ別れしたわけではない。
また会えるよね。絶対に会うよ。こう約束して話は終わった。

ヒロは抜け殻のようになってしまった。
少しでも暇があれば彼のことを考えてしまう。
ため息ばかりでてしまう。

これはいかん。こんなんではいかん。いつまでも
ふっきれない。だいたい私は暇すぎるのがいかん。
とりあえず、バイトに入る回数を増やそう。忙しくしよう。
そう思い、バイト先のカフェに電話した。営業時間は
はじまっているのに、誰もでない。変だな。カフェは
自宅から歩いて10分のところにある。近さで選んだバイトだ。
ヒロは直接行ってみることにした。

愕然とするヒロ。バイト先は永久に閉店したようだ。
まことに勝手ながら本日をもって…云々と入口のドアに貼ってあった。
「勝手すぎる…先月のバイト代もらってないのに。」
ヒロはへたりこんだ。

ヒロは卒業後、進学も就職もしなかったのはバンドに時間を
かけたかったからだ。これを仕事にできるかどうか
はあまり考えなかったが、自分の楽曲や演奏が、どのように世の中に
受け入れられるのか、全力で試したかった。学生をやりながらでもできる
と両親からも何度も説得された。事実Mariaはそうしているが…

とにかくヒロとしては生活の中心を他のものにしたくなかった。
バンドの練習は週2回、ライブは月2回だった。
残る時間はたっぷりあるが、他の時間は楽器の練習とか、作曲とか、
苦手な作詞とかにあてたかった。音楽理論も、テキストを買って
独学で勉強を始めた。だから、バイトも最低限しか
やらないようにしていたのだ。そのバイトもなるべく楽で家の近く、
そう思っていた。

ヒロは新しいバイトを始めた。ライブハウスで働きだしたのだ。
宇宙ダコでも時折出演するハコだった。
ライブのあと、マスターとの雑談のなかで、いまいるバイトの男の子が
もうすぐやめるが、後釜がみつからず、かなりピンチだという話だった。
はじめは、へー大変ですねーとか他人事のように言ってたヒロだったが。

「あの、私じゃだめですかね?」ダメ元で聴いてみた。

びっくりするマスター。「これね、結構大変なんだ。俺とバイト一人だけで
まわしてるんだ。それ以上人件費無理だから。機材のセッティングやPAも
できないといけないし、簡単な調理もしたりするんだ。」

たしかに、バイトは体格の良い男の子だった。でも、小さい店だから、
ギターアンプやベースアンプはそんなに大型じゃない。PAも小規模だ。
ちょうど高校時代の軽音部が管理していた機材くらいだ。
PAも多分大丈夫。高校時代、一番PAを担当していたのはヒロだった。
ヒロのミキサーに関する知識やスキルに勝てるものは男子のなかにも
いなかったのである。
 調理は全然問題ない。その店で出す、くそマズイカレーや焼きそば
を楽勝で改善してみせる自信があった。

「大丈夫、やれます。それに他にあてがないんでしょ。
使えるかどうか、とりあえず明日から引き継ぎかねて見習いに来ます。
もちろん手弁当で。」ヒロは一気に言った。

「おっ おおう じゃあ明日から。でも厳しそうだったら諦めてね。」
とマスターは言った。

確かに、力仕事多い。慣れないせいもあるがきつい。シャドーワーク
もやたらある。トイレの掃除とかもある。

でも、ヒロは思った。「これぐらいしないと、いつまでも鈴木君
(ジミーの地味な本名)のことばかり考えちゃう。」

ヒロのミキサーの知識に前任のバイト君は驚いた。
「すっげー俺、専門学校で習ったのに。独学なんだー。宅録か
なんかやってるでしょー?へっ中2!中2からやってんだー。
びっくりだねー。女の子で珍しいねー。」

機械の知識だけではない。ヒロは耳が良いし、勘が良い。PAも
結局バランスが取れているか、音質が良いか、エフェクトが
適切か、判断するのは耳なのだ。
ヒロが幅広く音楽を知っていることも判断や、演奏者との
コミュニケーションに役立つのであった。

海綿が水を吸うように仕事を覚えるヒロ。マスターは
「こりゃ大当たりだ。」にんまりした。
「時給は最低賃金法すれすれの安さで、ストレス満載だけど
本当にやってくれる?」
 

初恋サンライズ

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月14日(日)22時05分49秒 y227001.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
編集済
  ヒロが言うには、ライブの直前にジミーの留学が決まった。
ギター職人コンテスト優勝の副賞だ。
数年、アメリカに行くことが決まり、そのまま現地での就職の
可能性も生じた。それでも彼はヒロとの関係は遠距離恋愛でも
いいからつづけたいといった。いつかは帰国するし、待っててほしい
とも言った。ていうか、ひろ子ちゃん、大学も行ってないし、プ―なんだから
二十歳なったら結婚して、一緒に来るなんてのはどうだ。なんて案もあった。

 混乱するヒロ。ジミーとのことはラブラブ真っ只中だが。

 バンドはどうする。他の二人は大学にも通っているし、バンド以外の
進路も少しは考えているようだ。自分はバンドしかない。
自分のアイデンティティはバンドウーマンだ。他に何もない。
あとはテキトーなバイトや家事手伝いしかない。

 「アメリカでバンドやれば良いよ。ひろ子ちゃんなら引く手あまただよ。」
ジミーは言うが。

 ヒロは考えた。考え続けて、そして答えを出した。
宇宙ダコはやめない。そしてジミーとは残念すぎるけど別れる。
まだ話していないが、そのうち告げる。
ジミーとは決して別れたくないが、この恋がこの先ずっと成就
するのかは、もとから不安もあった。

 中3の「あの事件」のことは彼も忘れてはいない。話題には
しないし、彼の優しい性格からいって、忘れたふりをし続けるだろう。
でも彼の立場で考えるとヒロは胸が痛んだ。
今は、熱病のような恋に二人とも浸っているからいいんだけど。
 これもいい機会なのかもしれない。ヒロはそう決めて一人嗚咽した。
そうして数日過ごしたのち、例のライブがあったのである。


 こういう話を涙をながしながらMariaに話した。
Mariaもヒロの中3時代の話は知っていた。聴いていて胸が痛くなる。
そして言った。
「大丈夫?後悔しない? バンドを選んでくれるのは嬉しいんだけど。」

 ヒロは首を横に振った。

 もう朝が来ていた。バスの始発にはまだ時間がある。
二人はファミレスの駐車場に出た。

 「送っていくよ。」車のキーをクルクル回してヒロは言った。

 「嬉しいけど、私道わかんないんだ。」と方向音痴のMaria。

 「大丈夫。パパの車には最新式のカーナビがあるんです。」
自慢げに言うヒロだった。

 朝焼けに燃えるような駐車場。
ヒロはエンジンをかける。
カーラジオから つばきファクトリーの
「初恋サンライズ」が流れてきた。

 「この曲、好きなんだ。サンらー あーいず。つばきでは『まおぴん』
が一推しだな。Mariaは?」
「やっぱ『ききちゃん』でしょ。イヌ好き仲間だし。」

 二人は高校時代からアイドルはハロプロだけ好きであった。
他はサブカルだったり、洋楽だったり、ルーツミュージックだったり
コアなものばかり聴くのだが。
 

「ホーム」のファミレス

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月14日(日)20時17分47秒 y227001.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
編集済
  ヒロとMariaの地元は、ともに郊外の住宅地。
その中間地点の座間市もまぁ似たようなところ。
気の利いた店はなかなかない。

二人はいつも大手チェーンのファミレスで会うことが
多かった。特にヒロが自動車の免許をとってから。
あまりお金のない二人は、ここで何時間も話したり、
別々にスマホをイジリながらウダウダ何時間も過ごすことが
多かった。ヒロに彼氏ができてから、そういうこともめっきり
減ったが。

「親友をとられたようで寂しかったりもしたんだ。」
先に着いてヒロを待ちながらMariaは思っていた。
ヒロは少し遅れるらしい。2杯目のドリンクを取りに行こうと
したところでヒロが到着。

 「ごみーん。まったー?事故で道路が混んでてさ」
自動車のキーをクルクル回しながら席に着くヒロ。
店員の女の子に、ドリンクバーとサラダバーお願いします。
と即オーダー。
 ヒロはこういうときに迷ったことがない。
Mariaが「えーっとねー、うーん、キャー助けて―」というのを
何十回繰り返すのと対照的だ。Mariaは趣味や関心は男の子の
ようなものばかりだが、こういうところは極めて優柔不断系
腐れ女子なのだった。

 「やっぱ女の子同士は気楽で良いね。服もさーテキトーに
その辺にあったもの着てきただけだよ。今日のMariaのかっこは
可愛いけどね。どっか山でも登ってきたの?」
Mariaのごっつい靴を見てヒロは軽口をたたいた。

 「丹沢のほうの山に登ってきた。お父さんと。」まじめに
答えるMaria。Mariaは山ガールでもあったのだ。

 「へーホントに登ったんだーすげー」とヒロ。
「そうだみてみて、本日唯一のおしゃれ。ネコちゃん
帽子。ペル子を帽子にしたの。ナリ姐が作ってくれたんだー。
今日、宅急便で届いたんだ。かわええーでしょ」
マシンガンのように話しまくるヒロ。もっぱら相槌をうつ
Maria。そんな調子であっという間に数時間がたってしまう。

 本題が切り出せず、焦りがつのるMariaだった。

 「そういえばさ、この間のライブ、ごめんねー。
私、調子乗りすぎちゃったよ。鈴木君(ジミーの地味な本名)からもさ
『公私混同はいけないよ』とか注意されちゃったよ。鈴木君
ビデオも録画しててくれてさ、それ見たら恥ずかしいのなんのって
客もメンバーもみんなドン引きだしさ。顔から火が出たぜ。」
今も赤面しながら話すヒロであった。

 話がいきなり本題に入り、しかも勝手に解決してしまった
ことにMariaは驚きつつも安堵した。
「わかってんなら良いよ。ナリ姐にも直接、今と同じこといいなよ。」

 「うん、そうするよ。宇宙ダコのことではナリ姐にも相当世話になってるのに
自分のことばかり考えてたと思うよ。」ヒロは続けた
「言い訳するわけじゃないんけど、この間はメンタルもボロボロ
だったから。ライブ直前にいろいろあったんだ。」
 

omake

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月 9日(火)23時32分9秒 y225004.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
編集済
  「おねぇちゃん、向こうから赤い髪の毛の人が来たよ。」

「目を合わせちゃだめよ。声をかけられても振り返らないで。」


「おおー、久しぶり。小学生の私、中学生の私。どの時代も
可愛かったのねー」


「何かよくわからないこといってるよー。」

「反応しちゃダメ。スルーしなさい。無視。無視。」
 

ヒロ、小学生時代の習い事

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月 9日(火)18時12分11秒 y225004.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
編集済
   ヒロは幼い頃から、ピアノとヴァイオリンを習っていた。
音感というものは鍛えることもできるが天性の部分が
大きい。先生が指示したことをすぐに再現できる
耳の良さ、勘の良さがヒロにはあった。
 加えて、練習の合間に、ヒロが即興の曲を作ったり、
流行っている曲の旋律を弾き、かつそれを適度に崩して
弾けることに周りの大人は驚いた。
 こういう能力はクラシックの演奏家には邪魔かもしれない。
でも、先生たちは、ひろ子ちゃんは演奏家より、作曲家になると
いいわね、とヒロの遊びを止めたりはしなかった。

 ヒロにはクラシックの演奏家になるには難点があった。
先生が手本を示したことをその場で忠実に再現できても、
次の練習のときに忘れていることが多かったのだ。家に帰って
おさらいをする時点で忘れていた。
 先生たちはヒロが楽しく演奏して、もしかして作曲などの
道に進めればよいぐらいに考えたのである。

 ひらめきは記憶力が良いひとからは生まれにくいという
説がある。適度に忘れて、脳のメモリーに余裕がないと
インスピレーションは起こりにくいというものだ。
 

ヒロと宅録

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月 9日(火)15時40分56秒 y225004.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
編集済
   中二のヒロ。学校ではイジメられてやたので授業が終わると
すぐ帰宅。ヒロはDAWの世界にはまっていった。お父さんが
趣味でやっていたので、基本操作を教わり、あとは自分でネット
で調べた。宿題や予習を済ますと、お父さんが深夜帰宅するまで、
お父さんの書斎でDAW三昧。キーボードで入力した伴奏データを
好きな楽器の音色で置き換える。生楽器も少しは入れたい。
バイオリンは生で入れた。ドラムが上手くいかなかったので、
段ボールやゴミ箱など、その辺のものを叩いた音も加えた。
お父さんが若い頃弾いていたグレコのバイオリンベースも
おっかなびっくり弾いてみた。おおっいけるかも!ベースも生に
差し替えだ。ヒロはミキサーのトリムを上げたままベースを直結。
かなり歪んだ音色だったが、怪我の功名だった。ヒロはかっこいい!
と喜んだ。自分で歌ったり、ボーカロイドに歌わせたり。ベルベット
アンダーグラウンドとアイドルが共演しているような楽曲・演奏になった。

 自分でも歌詞はお粗末だと思うが、曲は中学生の作ったものにしては
良いと思う。他人の意見が聞きたい。でも、こういう趣味の友達もおらず。
思い切って動画サイトにあげてみるか。画像は風景とかペル子の写真で
ごまかそう。そう決めてからは早かった。

「中二の女の子です。赤い公園とか、モーモールルギャバンとか、
が好きです。洋楽はあまり知らないけど、Beatlesは聴きます。
いいのがあったら、教えてください。作曲は始めたばかりなので、
あまり厳しい感想はご勘弁を。褒めてくれるのは大歓迎です。歌詞が
ダサいのはわかっています。何か歌詞を書くコツや、参考になる
音源があったらぜひ教えてください。」

 などというコメントとともに音源を公開したヒロ。最初は殆ど再生され
なかったが、ある日を境に爆発的に再生されるように。コメントも
どんどん増えた。はじめこそ、すべてのコメントにレスをつけたが
追いつかなくなった。読むのが精一杯。

 学校から帰ると、コメントをチェックするのが楽しみになった。
イジメのことなんかどうでもいい。ここではみんな私のことを認めてくれる。

 日本語で歌詞の良いものを紹介するコメントも多かった。最初はメジャー
なものが多かったが、だんだんとジャックスだの、三上寛、割礼だのと、
アンダーグラウンドなものが増えていった。

 ヒロは、自分が生まれる前の、80年代や90年代の日本のロック
やアンダーグランドミュージックが、なぜかしっくりいくことに気付く。
もう、ヒロのディグは止まらない。ヒロはゆらゆら帝国、ゼルダ、そして
コクシネルの大ファンになってしまった。

 こうした中で、少し奇妙な名前の音源とであった。アンダーグランド内
の有名バンドとは違って、ネット上でも殆ど情報のない「宇宙ダコ」という
人の音源だった。曲も歌詞も気に入ったので、この名前はずっと印象に残ったのだった。
 

途方に暮れるMaria

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月 7日(日)21時01分53秒 y225004.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
  ナリ姐にああいったものの、Mariaは無策だった。
考えても見れば、恋愛関係の話は最も苦手なジャンル。
なにしろ、Mariaは彼氏いない歴19年、つまり
男性と付き合ったことがないのだ。女性ともないが。

好きになった男の子の一人や二人は当然いるが、
人見知りをする性格で口下手、無口なMariaである。
そして、美人にありがちだが、「どうせ男がいるに
決まってる」「俺の相手などするわけない」という
男からの思い込みでMariaに声をかける、告白する
男は殆どいなかった。たまにかけてくるやつは、たいてい
自信過剰で、カッコばかりのMariaが最も嫌いな
タイプだった。
 Mariaが過去に好きになった男の子は皆、見た目
はパッとしないが、優しかったり、センスがよかったり
、頭がよかったり、まぁそういうタイプだった。

 とにかく、ヒロに恋愛に関して何か言える経験が自分には
なかった。ナリ姐にまかせれば良かった。なんであんな
こといっちゃたのかな。後悔がつのる。

 しかし、よく考えてみると、これは恋愛の問題だったの
だろうか。Mariaは気付いた。ちがう、そうではないんだ。
これはバンドの活動に関するスタンスの問題なんだ。
私が嫌だったのは、多分、ヒロがバンドにプライベートの空気
を持ち込み過ぎたことに対してだったのではないか。

 でも、ヒロに「それってなしなの?いつきめたの?
ていうか、このバンドのリーダーって誰?何目線なのMaria?」
とか言われたら・・・・どうしよう?」

でも、もう時間が迫っている。これからお互いの地元の真ん中あたりで
会う約束をしている。ヒロはただの食事だと思っているが。

どうしよう、まとまらない・・・・途方に暮れるMariaだった。
とりあえずバスが来たので乗ることにしよう・・・
 

ヒロの迷走

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月 4日(木)20時31分35秒 y225004.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
編集済
  ヒロは中学の同級生で、ギター職人を目指している彼と
どんどんいい感じになっていった。彼は東京で一人暮らし
していたが、ヒロはそこに入りびたり、半同棲のような
感じになっていった。

 ヒロは例の事件があるものの、もともと性に奔放という
わけではなく、むしろ恋愛には保守的なほうだ。
高校時代もいつもMariaとべったりいっしょにいたので
男の子と付き合うこともなかったのだ。

 つまり、「ジミー」は(地味なので、ナリ姐からこう命名された)
ヒロの初めての彼氏だった。

 ヒロはもうデンロデロであった。バンドの二人にも音楽以外の話題
となればジミーのことばかりになった。

 ナリ姐もMariaも「まぁ最初だからしかたない、そのうち
落ち着くべぇ」と大目に見ていたのだった。

 あるライブの日、ジミーが作ったセミアコベース初お披露目の
日だった。そのベースは見た目、音、弾きごごち、すべて良く、
ヒロは上機嫌だった。対バンの人からも、「そのベース良いね、
どこのメーカー?」やたら褒められるし、MCの最中にも
「ベースかっけええー俺もほっしー」と叫ぶ客がいた。

舞い上がるヒロ。
「そうでっしょー、このベースはね、私のために、わ、た、しの
カ・レ・シが作ってくれたのよー、めっちゃ愛がこもってるのよ。
かっこよくてあったりまえなのよー」
などと、ベース自慢というか、のろけのようなことを言いだした。
さらに、
「あ、その彼氏、今日来てるんだー、そこにいるのよ!キャー!ハニー!
好き好き愛してるわー・・・・」
延々とのろけ続けるヒロ。

いつもヒロもMCがすべったりしたときにはナリ姐のするどい
突っ込みが素早く入るのだが、今日はあまりのことに
タイミングを逸してしまった。当惑するMariaとナリ姐。
客席も微妙な空気になってきたが、今のヒロにはそれがわからない。

ジミーも恥ずかしくて、どこかへ行ってしまった。

終演後、ナリ姐とMariaは相談する。
「アイドルってわけじゃないから、恋愛してもいいんだけどね。」
二人して同じことを言ってしまった。苦笑いしてしまう。

「どうしたもんかな・・・」とナリ姐。

「私が言っておくよ。」とMaria。


「え、大丈夫?」とナリ姐。普段、口数も少ないし、
Mariaは決して弁がたつほうではない。

「大丈夫、まかして」とMaria。
まぁ、長い付き合いの二人だから、うん、ここは
Mariaから言うのがいいんだろう。ナリ姐も納得した。


 

ワンちゃん帽子

 投稿者:ピクレルジュラ  投稿日:2017年 5月 4日(木)00時58分43秒 y225004.dynamic.ppp.asahi-net.or.jp
編集済
  その日、ナリ姐は自作の帽子をかぶってライブを
やった。彼女が自作の帽子を衣装にするのは別に
珍しくはない。しかし、今回のは少し変わっていた。

海賊がかぶるような形なのに、正面にイヌのアップリケが
貼ってあったのだ。ナリ姐としては自分が目立つためもあったが
このワンちゃん帽子を、イヌ好きMariaに見せびらかす
ことも重要だった。

「いいなーそれ私も欲しいなー」あっさりと術中にはまるMaria。

「どうだいいだろう。だが、やらぬ。欲しければ自分で作れ。
女子たるもの裁縫もでけんでどうする、日頃から私が言っているだろう。」


「いいなー、いいなー欲しいなー」ナリ姐の話をまるで聞かずに
同じことを繰り返すMaria。

「ネコのはないのー、ネコのは」とヒロ。

結局、2人の分も作ることになってしまった。
結局、自分で墓穴を掘るようなことをしている
ナリ姐だった。
 

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